海へ行く

急に海を見たくなった。
水辺も隅田川では満足できなくなったということだ。
身体は日々ますます老いて乾いてゆく。
それと同時に心も渇きを訴えるのである。
つまらぬ世事の雑音に耳を塞いでいても、
知らぬうちに紛れ込んできて、
春の憂鬱をひきおこす。
ドジョウやらテポドンやら原発やら、
尖閣諸島騒ぎやら、ああ、煩いと思う。

それで、突然思いたって電車に乗った。
近い海ならお台場に行けば海らしきものがあるが、
東京湾という閉鎖海域は水溜まりの大規模なものだと
勝手な山猫軒の思いこみで、
そりゃあ、海と言えば太平洋でしょう。
オホーツク海とか、日本海とかもいいけれど、
いかんせん遠いのである。
それで、太平洋に行くことにして電車に乗った。

山手線~東海道線~横須賀線と乗り換え、
北鎌倉で下車する。
北鎌倉駅前には「円覚寺」がある。
海にお参りする前には順序として
お寺にご挨拶せねばなるまいと、
山門をくぐった。
無信心な山猫軒は東京下町に暮らしているから、
辺り一面お寺だらけである。
ちょいと散歩と決め込んで歩き始めたその先から
お寺、お寺なのである。
しかし、なんとまあ、淺草界隈のお寺と鎌倉のお寺の
規模の違いはどうしたことだろう。
淺草一帯のお寺が全部すっぽり収められるのではないかと
思うほど広い!
ちまちました東京のお寺とは規模が違う。
このような感慨に耽るのも普段、ちまちました町の片隅で
ひっそりと暮らしているせいなのだろう。

この「円覚寺」をあとにして、海目指して歩く、歩く。
途中に猫のギャラリーがあっても、次回改めて参ります、
とばかりにどこにも目もくれずに歩くのである。
鶴岡八幡宮を突き抜けて歩く。
ちょうど12時をまわったところである。
朝食べたフルーツサラダのエネルギーが
そろそろ尽きるころである。
空模様は薄曇り、風も汗ばむ額に心地よい。
どこかで昼飯をと思いながら、よさそうな食事どころを
探しているうちに潮風が吹いてくるのを感じた。
とうとう、どこにも寄らず海岸に到着なのである。
一軒ぽつんとあったコンビニで冷たいお茶と、
お握りを二個、デザートにミニおはぎを買った。

海岸に出て、小さな川岸にあるコンクリートの堤防のような
所で腰を下ろしてお握りを食べ始めた。
突然近くでやはり弁当を食べていた男が
「鳶が来るぞ!」と叫んだが、
山猫軒なんのことやら分らぬまま、聞き返そうとしたとき、
手にしたお握りが一瞬にしてかき消えてしまった。
バサッと言う衝撃のあとにである。
上空から偵察していた鳶の急降下攻撃であった。
海岸には鳶は付きものだとはいえ、
昼食のお握りを強奪とくれば、穏やかではない。
二個買ったのが幸いであった。
今度は取られぬようにこそこそと食べる。
どこまでも穏やかな春の砂浜で頭上の略奪者を
警戒しながらの昼飯であった。

腹ごしらえをして、由比ヶ浜から、歩き稲村ヶ崎、七里ヶ浜へ。
テクテク歩く。
砂浜に文字が読み取れる。
「シアワセ aiko」 と。
まだ、風に吹き消されることも、波に洗われることもなく、
大きく記されている。
ふっと、笑みがこぼれる。
若い二人連れを想像するのだ。
周りを見渡せどもそれらしき人影はない。

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左に海を望みながら歩く。
上野公園の人混みの中の散歩とは違う趣の散策である。
稲村ヶ崎でしばらく休憩。
陽が西に傾きはじめ、時折雲の切れ目から太陽の光が
海の上を金銀の輝きに染めあげる。

稲村ヶ崎から江ノ電に乗った。
藤沢まで、しばらく電車の旅を楽しむ。
また、改めて来てみよう。
四季折々の海に会いに来よう。
いつしか、渇いていた心がしっとりと潮風にくるまれている。
春の憂鬱は消えていた。
そして、心地よい疲労が身体を包んでいた。

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[ 2012/04/19 11:16 ] 未分類 | TB(0) | CM(4)

鳶に油揚げならぬおにぎりを奪われて
狼狽する山猫軒さんを想像すると、なんだか
笑えてきました。ごめんなさい。あはは!
[ 2012/04/20 12:22 ] [ 編集 ]

Re: タイトルなし

みず保さん。

きっと、「間抜け面」そのものだったのでしょうね。
お恥ずかしい。
一口囓っただけのお握りだったのが、
悔しい!!


> 鳶に油揚げならぬおにぎりを奪われて
> 狼狽する山猫軒さんを想像すると、なんだか
> 笑えてきました。ごめんなさい。あはは!
[ 2012/04/20 16:03 ] [ 編集 ]

鳶が、おにぎり好きだったとはねぇ~
ま、施しを分けたと思えば・・・・
海辺でオゾンをたっぷり吸い、のんびりと
過ごしたいい一日でしたね。
[ 2012/04/23 03:35 ] [ 編集 ]

Re: タイトルなし

トパーズさん

鳶は油揚げが好物とは限らないようです。
特に鎌倉においては。

[ 2012/04/30 11:39 ] [ 編集 ]

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