甘美な記憶

別れは悲しくも残酷なものである。
それが死に別れであろうと、生き別れであろうとも。
そして、別れと共に思い出が姿を現す。
想い出の中で辛かったことは時を経る毎に
甘美なものに変わってゆく。
これは山猫軒にも覚えがあるが、
脳には自分に都合の悪いもの、
不快なものものは記憶しないどころか、
無いも同然となってしまう「自動忘却装置」が備わっている。

一種の自己肯定欲というか自己保存本能みたいなものだろう。

そして、この甘美な思い出が我々を縛る。
例えばカンシャク持ちの恋人と別れた山猫軒が
妙齢の淑女と出会ったとしよう。
また、相手の淑女は夫を病で亡くしていたとしよう。
互いに過去の甘美な思い出を引きずりながら、
次なる人生の階段を登ろうとしても、
それは、難しい。
年齢を重ねれば重ねるほど難しい。

若ければどんどん現われる出来事を甘美な思い出に
上書き保存できるだろうが、
なまじ「分別」があるが故に上書き保存できにくいのである。

甘美な思い出ほど、残酷なものはない。
戻っては来ない甘美な過去の軛(くびき)から逃れるのは
容易なことではない。
別れが残酷だというのは、そう言うことなのだ。
別れは出会いをしばしば邪魔をする。
出会いは嬉しさ、とまどい、不安、心ときめく
未知のものに対する怖れが一緒につきまとう。

思い出には怖れも、不安もない。
平穏な世界だ。
そこにいる限りは安心できる。


高齢化社会でお一人様が増え続けているが、
振り返ってみたら伴侶がいた時間よりも、
一人でいた時間が長いなんていうことが
これからは当たり前のようになるのでないだろうか。
本当は少ししかなかったかも知れないはずの
甘美な記憶こそがくせ者なのである。



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[ 2012/03/13 15:41 ] 未分類 | TB(0) | CM(10)

いい出逢いがあった・・
だが 踏み出せないという事でしょうか?
ブレーキ早過ぎるでしょww
出会いも別れも きっと無いよりあった方がいい・・
女は強い?
またまた そんな事を言って逃げてはいけませんよ~ww

[ 2012/03/13 20:00 ] [ 編集 ]

ふ~ん

記憶はきれいなまま、どんどん純化してゆきますね。
現実はもう薄汚れた塵が積もるばっかりなわけで
現実の生身の人間は
ここに存在しない思い出の人には
逆立ちしても勝てない。

それから
同じ事を繰り返す元気が残ってないのかもしれません。
甘美な時間よりも、もろもろ付随に気を取られ
まぁ~独りがさみしいけど、気楽かな?と結論を出して
一歩も前にでないような気もしています。

長く生きて来ている分、単純には事が運ばないですね…
[ 2012/03/13 22:32 ] [ 編集 ]

甘美な思い出なんか~

ふふふ
チカちゃんの言うとおり

もう若くない
元気な時間もそう残っていない・・・
甘美な思い出なんか
今が大切なのよ(笑)
[ 2012/03/14 00:12 ] [ 編集 ]

ごちそうさま

私には屋形船の延長のノロケにしか聞こえないんですが。
優柔不断さを分別という言葉で言い訳にしちゃいけませんぜ。
そんで、カンシャク持ちの恋人と妙齢の淑女と、どちらになさるんですか。
分別ないやっかみ人間より。
[ 2012/03/14 08:31 ] [ 編集 ]

Re: タイトルなし

チカさん。
一般論です。
と言っても説得力に欠けていることは
否定できませんね。
アクセルを踏むかどうか・・・



[ 2012/03/14 14:17 ] [ 編集 ]

Re: ふ~ん

みかんさん。

そうなんです。
立ち止まる方が楽なんですね。
それも、ひとつの生き方です。


[ 2012/03/14 14:18 ] [ 編集 ]

Re: 甘美な思い出なんか~

かをるさん。

あらら、
あなたのブログを読んでこれを書いたんですよ。
それに、分りやすく、
たとえ話風に僕をふくめてみた。
こんなところです。


[ 2012/03/14 14:21 ] [ 編集 ]

Re: ごちそうさま

geotechさん。

当たらずとも遠からず・・・

悲劇になるか、喜劇になるか、
はたまた、ハッピーエンドか。
楽しみにしておいてください。
独り者の特権です。




[ 2012/03/14 14:24 ] [ 編集 ]

え~っ geoさんのコメ否定されないんですか?
こりゃぁ、この先が楽しみです。
[ 2012/03/15 23:15 ] [ 編集 ]

Re: タイトルなし

トパーズさん。
みなさん、大騒ぎですね。
来週のニューヨークタイムズをご覧下さい。
というほのどのことではございませんよ。
[ 2012/03/16 23:58 ] [ 編集 ]

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