続 猫と暦 第10話 森の小径

  


    続 猫と暦 第10話 森の小径


  

珈琲を飲んでいるサツキさんに、またしばらくこれまでのことを話した。
カタツムリを頭に載せた蛙のことや、数え切れない数の生き物たちとの大会議のことを語った。
そのカタツムリを頭に載せた蛙に会いたいと、言い張るサツキさんを連れて森に出た。
蛙たちはそのログハウスから森の小径を1キロほど行ったダム湖に移動しているのだ。僕たちはその季節にしては暖かい枯れ葉の積もった道を歩いた。
ダックスフントのアースを先頭にハナビィとマチス、最後にサツキさんと僕。
いつの間にか気付かぬうちに、サツキさんの腕が僕の腕に絡んでいた。
「タケさんと、こんなふうにできたらいいなって、思っていたの」
腕に力を込めながらサツキさんが言う。
「タケさんは?」
何と答えたらいいのだろう。挫折と失敗を重ねたあげくに辿り着いたのが
「コネコネコ」のカウンターだった。
そこに座っている時間で十分。それ以上の何物も望んではいなかった。
もしも、望んだとしても、それが失望に変わるのが怖かった。
そのような歳になっていたのだ。
僕たちはこの時間が過ぎ去ってしまうのを惜しむかのようにゆっくり歩いた。
散りそびれて枝に残った葉のあいだから、木漏れ日が僕たちに注いでいた。
森の奥からは鳥のさえずる声が聞こえていた。
髪に白いものを見せた、もう若くはない二人は人気のない静かな道を行く。
歩く森の小道の先に開けた草原が見えてきた。
その向こうに湖面が銀色に光っていた。
アースが耳をひら、ひら、させて跳び跳ねるように走って行く。
やがて、蛙たちの新しい棲み家のある湖に着いた。
先に着いたハナビィたちが水草の茂る湖畔で二人を待っている。
大きな水草の葉の上にカタツムリを頭に載せた蛙が偉そうに座っていた。
いくら偉そうにしていても小さな雨蛙なのである。
カタツムリを頭に載せていなかったら、そこいらに幾らでも見かける只の蛙にしか見えない。
「また、会いましたな」と蛙が言う。
「ああ、また会えて嬉しいよ」と僕が返す。
頭の上のカタツムリも元気なようだ。
「ここの住み心地はどうだい?」
「街中の池よりはずっといいね。気に入っているよ、みんな」
「まあ、ほんとうにカタツムリが頭に載っているわ」
サツキさんがしゃがみ込んで蛙を見る。
「おいらはこの女を始めて見るぞ」
カタツムリを頭に載せた蛙は怪訝な口ぶりで言った。
「ハナビィのお養父さんの奥さんか?」
この言葉にサツキさんはちょっと頬を赤らめながらころころ笑い声を上げる。
「まあ、なんというか・・・」
僕も少し年甲斐もなく照れて返事を濁した。
「また、厄介なことになっているようだな」
カタツムリを頭に載せた蛙が目玉をぐるりと回して言う。
「2回戦のゴングが鳴ったということさ」
サツキさんと並んで蛙の顔を覗きこみながら僕は言った。
「今度こそ、発電所を送り届けるのかね」と蛙。
「たぶん。ちょっと違った方法で」
ここで僕はマチスの計画を話した。
「それはいい。いいと思うよ。おいらも、賛成だな」
サツキさんはここでマチスの計画を知ることとなった。
ログハウスに戻った僕はガレージから自転車を引き出して、幹線道路沿いにあるコンビニまで食料の調達に出かけた。
森を10分ほどで走り抜け県道に出て右に行くと途中に野菜を売っている店があった。採れたての新鮮な野菜がビックリする安い値段で売っている。
日に焼けた顔をほころばせている農家のお婆さんからそれらを買った。
そこからほど近い所に広い駐車場の奥にコンビニがある。
便利になったものだ。この国では何処へ行ってもコンビニと自動販売機がある。
煌々と照明を灯し終夜営業。電気は原発からということだ。
国中の自販機を無くしたら、原発何基が不用になるのだろうなどと思いながら、自転車を走らせる。
自転車のカゴに野菜と弁当と飲み物などを入れてログハウスに帰った。
当然ハナビィたちの食料も忘れずに。
ログハウスに帰るとキッチンでサツキさんが冷凍食品と保存食を出して思案投げ首だった。
買ってきた新鮮なレタスやトマトなどを見せると嬉しそうに微笑んだ。
あとはサツキさんの腕前におまかせだ。料理上手は「コネコネコ」で証明済みなのである。
僕はハナビィたちに買ってきた食事を用意してやる。
遅い昼食だった。みんな空腹だったことを今更のように思い出しながら食べた。
形がいびつなトマトが美味しかった。子供の頃に庭に実っていたトマトの青い味がした。

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[ 2012/01/18 03:48 ] 未分類 | TB(0) | CM(1)

挿絵が欲しい・・・!

読みながら頭の中で場面や風景を想像する
私の想像の中の風景や登場人物は作者とは違ってるだろうなあ
でもこれが読み物の楽しいところ

[ 2012/01/18 21:34 ] [ 編集 ]

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