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ネコと暦 その十五 まずはアメリカの意向を



  ネコと暦 その十五 まずはアメリカの意向を



電力会社の社員とおぼしき男が線量計を肩に担いで走ってきて数人の男たちと共に建物を測り始めた。
ピーッ、ピーッ、ピーッ、音を立て始めた線量計は建物に近づくにつれて針が烈しく振れ始めついにはピーッと高い音を立てたかと思うと、針は振り切れてしまったのである。線量計を持っていた男は大声で、
「退避しろ、退避、退避、みんなここから離れろ。」
と建物の周りにいた人たちに大声で叫んだ。
その声を聞いた者たちは慌てふためき脱兎のごとく○○町原子力資料館から離れた。
電力会社の本店の本店から1ブロック以内は立ち入り制限の非常線が敷かれ、
大勢の警察官が続々と到着配備についている。
報道各社の車も周囲に到着しつつあった。あたりは物々しい空気に包まれていた。空は暗く翳り用意された投光器の明かりの中で○○町資料館は一際その存在を誇示しているのが高架を走り行く電車の窓からも見えるのであった。
建物の移動があって30分が経過した。
テレビは既に臨時ニュースを流し始めていた。
詳細は不明としながらも、電力会社の本店の脇に不審な建物が出現したこと、
空に黒いものが浮かんでいたこと(これは視聴者提供の動画が紹介された)
その建物は○○町資料館というサインがあるらしいことなどを繰り返し報じていた。
電力会社内では各部門の幹部社員が招集され緊急対策会議開かれていた。
また、監督官庁の動きもあわだたしかった。ただし、電力会社の本店が役所の近くとあって情報は比較的容易に得られているのであった。
そして、第一報は首相官邸にも届けられた。
電力会社の会議では不可解な建物が○○町資料館とおぼしいことから、海辺の発電所の事故処理にあたっている責任者に連絡を取ったうえで、すぐさま、○○町へ行き原子力資料館の確認をするように指示をしたのである。
与えられている回答猶予時間は6時間とあった。
既に45分が経過している。まず、原状確認をしてから対策を講じなければならないというのが会議で確認された。

海辺の発電所の事故現場から三台の自動車が○○町へ向かって猛スピードで走り出していた。ものの15分も走れば○○町に到着するのである。
無人の町並みを切り裂くように自動車は走る。動物の姿は見えなかった。
暗闇にひそんでいるのであろうか。車に乗った男たちは詳しいことを会社の本店から知らされてはいなかったが、テレビのニュースでそのことは知っていた。
誰一人口を開くものは居なく重苦しい空気が男たちを包んでいる。
やがて、車は公園の入り口に到着した。原子力資料館に続く道の先をヘッドライトが照らした。
しかし、ここにはあるはずの建物はなかった。ヘッドライトの光りは暗い闇の中を空しく探るばかりであった。
防護服とマスクを付けた男たちは原子力資料館があったと思われる場所にたった。うろうろと歩き回るが何も無い。綺麗さっぱり消え失せていた。
責任者とおぼしき男が携帯電話を取りだした。呼びだし音の後にすぐに相手が出た。電力会社の本店の会議室に詰めている幹部社員だった。
「もし、もし、私です。今○○町原子力資料館に来ましたが、建物はありません。なにも、ありません。放射能の測定と土壌のサンプルを採取して、周囲を更に調べて戻ります。はい、写真は撮りました。では」
携帯電話をポケットに収めた男は皆に帰りを促して車に戻った。
三台の自動車は来た道を今度はスピードを上げることなく静かに戻って行った。

1時間が経過した。電力会社の本店では○○町原子力資料館が現地には無い、という報告を受けて対策会議が進行していた。
ホワイトボードにエントランスのドアガラスに貼られていた文書のコピーが
あった。

<告>

この建物は○○町原子力資料館である。
これは貴社並びに国がここに建てたものであるので、
お返しすることにした。
たっぷりと放射能にまみれているからそれもお返しする。
これを念頭において、原子力発電所を続けるのか、
それとも、廃止するのかを決めて貰いたい。
それとともに、これまで国民に隠してきたことを、
一切合切すべて明らかにして、今後原子力の使用は行わない
ということを表明するよう要求する。
もし、原子力発電所をこの国から無くさないというのであれば
次ぎにもっと、大きな物を送り届けることになる。
例えば事故を起こした原子力発電所などを。
回答は六時間後にテレビで発表するよう要求する。

電力会社とこの国の政府へ

○○町の全ての生き物一同



この文書は監督官庁へ、そして首相官邸にも届けられていた。
問題はこの電力会社だけでは決めかねることであった。この国の他の電力会社全てに関わり、国の原子力政策を根本から変えることにもなるのである。
監督官庁では電力会社の最高責任者らと大臣ほか担当部局の局長を始めとして幹部たちが対策を話し合っていた。
出席者のほとんどは、事ここに至ってもまだ建物の出現を現実のこととして受けとめられず、しばらく様子を見たらどうかという意見もあった。
しかも、相手と話しあいをしようにも皆目どこの誰なのか見当も付かないのである。
公安関係の幹部は
「これはどこか外国の謀略かテロリストの仕業であるから、安易な妥協をするべきではない。」
と主張をするのであった。
しかし、海辺の発電所の責任者から確かに○○町原子力資料館が現地から消失したむねの連絡が入ってからは虚しく時間が過ぎていくばかりなのである。
海辺の発電所の事故から8ヶ月間、起きたことを曖昧にして処理し、薄れてゆく原子力発電への批判を幸いとしてその継続を図ってきたこの国の政府と経済界の喉元に、さあ、どうするのだと、刃が突きつけられたのだ。
それも、一方的に。交渉しようにも相手が分らないのだ。<○○町の全ての生き物一同>とあり、まさにお手上げなのである。
結局ずるずると貴重な時間が過ぎていった。

テレビは各局が一斉に臨時番組をもうけてこの出来事を報道していた。
視聴者から提供された空に浮かんだ穴の動画が繰り返し流され、それをしたり顔で解説するコメンテーターたちが映し出されている。
エントランスのドアに貼られていた文書はまだ公表されていなかったから、どのような目的でこの建物が電力会社の本店の所に現われたのかを推測するのは難しかった。あるテレビ局では○○町原子力資料館の館長のインタビューの模様を報じていた。館長は避難先の新潟県で原子力資料館のことを問われるままに答えていたが、後にも先にも原子力資料館がこれ程までに脚光を浴びるのは初めてのことだと当惑気味に何度も話すのであった。

首相官邸に全ての閣僚が招集された。原子力担当の大臣から説明を受けた首相は肉付きのいい下あごを震わせながら、
「これは由々しきことである。だいたい、遠くにある建物が突然現われたというのもにわかには信じがたい。しかも、原子力発電を廃止しろという脅しの文書まである。まさに、テロリストの仕業と言っても良い。」
と言葉を切った。続けるべき言葉が思い浮かばなかったのである。演説上手と言われた首相でも後は何を言って良いか分らなかったのである。
この問題は官僚の手を借りて考えることではなかった。首相を始めとしたこの国の閣僚たちは自分の頭では何も考えられなかったのである。
振り付けをしてくれる官僚たちがいてこその首相であり大臣であった。
少しでも自分で考えて行動しようとすると、それが自分たちに都合の悪いことだとマスメデイアや官僚たちが画策してかれらを引きずり落としたから、凡庸な首相と大臣ばかりになってしまっていたのだ。
官僚たちもこの問題に対してはお手上げだった。対策を講じようにも相手が不在であり、時間もなかった。えい、やあ、とばかりに結論を出さなければならないのである。それには責任というものがつきまとう。
「このまま、黙殺するというのはどうだろう。幸いにしてこの脅しの文書はまだ公にはされていない。今我が国には原発は絶対に無くすることはできない。
あの現象はたまたま偶然のことだと思おう。」
電力会社と親密な関係にある大臣が言った。
黙っていた首相は外務大臣に聞いた。
「アメリカにはこのことを伝えたのですか。」
「はい、先ほどアメリカ駐日大使に伝えました。本国に伝えると言っておりました。今のところ何の反応もありません。事がことですから、判断に迷っているのでしょう。」
と外務大臣は答える。
アメリカ側の考えを聞かないで結論を出すのはまずい、そう首相は考えていた。
他の大臣もおおむね似たような思いなのである。
「それではアメリカの考えを聞いた上で結論を出しましょう。」
と首相は言って椅子から立ち上がった。
またしても、何も決めることなく時間は費やされるのであった。


ハナビィと里親は再び池の畔に帰ってきた。原子力資料館が消えた後また会議場に移動していた生き物たちは一匹と一人をみとめると、歓呼の声で迎えるのであった。明るく晴れた空には穴が浮かんでいた。









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[ 2011/12/03 17:12 ] 未分類 | TB(0) | CM(2)

米国側としては、こんなタマを急に振られても、
困るなぁ~ さぁ どんな回答が来るのかしら?
[ 2011/12/04 07:42 ] [ 編集 ]

Re: タイトルなし

トパーズさん。
そうでしょう、困るでしょう。
困っているのです。
日本という国は戦争に負けてそのあと
さんざんアメリカの助けを借りて経済復興を
成し遂げたというのに、
いつまで経ってもおんぶにだっこです。
独り立ちできない半端なやつです。
情けないと言ったらありゃしない。


> 米国側としては、こんなタマを急に振られても、
> 困るなぁ~ さぁ どんな回答が来るのかしら?
[ 2011/12/04 09:53 ] [ 編集 ]

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