猫と暦 その十二 ダックスフントのアース


    猫と暦 その十二 ダックスフントのアース


そして、再び会議が始まったのである。
「満場の諸君、そろそろ、時間も迫ってきたので、会議を再開したいと思います。それぞれの代表のものは前に進み出て意見を述べてください。」
カタツムリを頭に載せた蛙はまるで王様のような風情で会議の再会を宣した。
まず、最初に現状維持を主張したイタチのオカミさんが発言した。
「アタシ、よく分かりもしないで、さっきは云ってしまいました。フクロウさんのお話しを聞いて、よく分りました。アタシはどうなってもいいけど、お腹の赤ちゃんは・・・元気でいて欲しい。だから、ウチの亭主と相談して、何かいい考えがあるのなら、牛さんの云うようにしたら、って、決めたんです。」
お腹の赤ん坊をかばうようにイタチのオカミさんは涙混じりに訴えた。
池の周囲はまるで誰も居ないかのような静寂があるのだった。
イタチの夫婦が演壇の岩を退くと、すっかり痩せた豚が進み出た。
「これは、どう考えても理不尽だと思う。僕たち豚はこの世に生を受けたその先には人間の食べ物になるという運命からは逃れられないものと観念し、それはそれでも、仕方がないと思ってきた。
しかし、どうだ、さっき牛が云ったように捨てることはないだろう。
人間というものは実に身勝手でとんでもない生き物だと思う。
しかも、あの海辺の発電所の事故があろうと無かろうと、おなじことが繰り返されることも考えられると言うではないか。
せめて、あのような恐ろしいものをこの世からなくせるものなら僕たちは命にかえてもそれを為すべきと思う。」
すっかりスマートになった豚はそう述べるとカタツムリを頭に載せた蛙の方ではなく、母のマチスと行儀良く座っているハナビィに向かって頭を下げるのであった。
そのような豚の振る舞いに内心苦々しく思いながらも、議長が
「次ぎに意見を言いたいものはおるかな?」と言うと、
白い大きなフクロウが樹上の木の葉から顔をのぞかせて、発言を求めた。
「たしかに、海辺の発電所が無くなればいいのだろうが、もしそうなったとしても、これまで降り積もった<目には見えない小さな危険な物>は我々が十万回死ななければ消えないというから、ここに棲み続けることはできないのではないか。それなら、人間たちと同様どこか安全な場所に逃げるのが良いとも思うのだが。そうしなければ今にここには生きているものの姿が消えてしまう。」
その時、白い大きなフクロウの言葉にかぶせるように声があがった。
「待ってください。フクロウさんのおっしゃることはもっともですが、フクロウさん鳥たちは空を飛べますが、私たちモグラはそうはいきません。蛙さんも亀さんも遠くへ逃げようにも、逃げられないのです。
ここに留まるしか方法がないものたちが大勢いることを忘れないでください。」
モグラがイタチの夫婦のいるそばの地面から顔を出して云うのであった。

ボクも云いたいことがありますという声がした。
黒い小さな犬が現われた。ダックスフントである。大きな耳をひらひらさせて、
短い足を忙しく動かし演壇の岩の上にちょこんと座った。
身体は小さいけれど賢そうな目をした中年のダックスフントなのである。
「僕はアースです。飼い主が付けてくれた名前です。」
そう言えば、これまで現われた生き物は誰も名前を持っていなかったのである。
当たり前と言えばそれまでだが、人間に飼われていた動物にはハナビィやマチス、そしてこのダックスフントのアースには人間がつけた名前があった。
「たしかに、牛さんや豚さんの云うように人間たちは僕たちをそのままにして逃げてしまいました。でも、それは無理もないことです。
動物たちを連れて行きたいとは思っても、それを受け入れる避難所がないのですから。僕の飼い主も涙を流して謝っていました。
僕の飼い主はそれでも、きっと迎えに来るからね、それまでなんとか元気にしているんだよと云って、ドライフーズを沢山置いて行ってくれました。
また、動物保護団体の人たちも出来る限りの猫や犬を助け出して、里親探しをしています。僕の友達も遠い北陸の町で優しい里親の所で飼い主が迎えに来る日を待っています。
猫のハナビィさんからこのことは聞きました。
ですから、この町に住んでいた人間も可哀想な被害者なのです。
こんなむごいことを二度と再び起こしてはならないという事をなんとか、
この国の指導者と電力会社に思わせることができるのなら、それが一番です。」
ダックスフントのアースはハナビィ見やりながら意見を延べ終えると、
次々に、兎、タヌキ、鶏、山羊も鴎や烏も考えを述べるのだった。
多少の言い方は違っていたが、おおむね意見は一致していた。
この場所に留まって、我が身をなげうってでも海辺の原子力発電所のようなものは未来永劫作らせない方法を考えるというものだった。
「では、諸君おおむね意見が出そろったようであるから、その結果を集約してみようではありませんか。」
カタツムリを頭に載せた蛙はカタツムリの角が動く方へ目玉を動かしながら
云うのである。
「一つ、我々を捨てて逃げたこの町の人間は責めないことにする。
二つ、<目には見えない小さな危険な物>を作り出す発電所をこの国から無くなるようにする。
三つ、我々は女子ども年寄りを除いて全てが一致して行動する。
大体はこんなところでありましょう。
さて、問題はどういった方法があるかである。
人間たちさえもてあましている代物を果たして我々が始末できるのか、
そこが、大問題と言えますな。」
蛙はできるものなら腕組みをしたいとでも言いたげな深刻な顔つきで、ハナビィに、
「この問題の提案者であるハナビィさんにお聞きしたい。
あなたはここにいる生き物たちの意見を聞こうと云ったが、それは問題解決の妙案があってのことだったのだろうか。
我々蛙にはとんと思いつかないのだが。」
と質問した。
カタツムリを頭に載せた蛙が云うことはもっともなことなのである。
そもそも、この地方一帯のあらゆる生き物たちを集めて、海辺の発電所が恐ろしい事故を起こした。その結果危険が見にせまっている。その危険とはこういうものである。と聞かされて、「さあ、どうする?」と言われても途方に暮れるのが当たりまえなのだ。

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これはブロトモ<ふりむけばアクア>http://mizukusaji.blog56.fc2.com/
komaojiさんの愛犬です。































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[ 2011/11/28 12:36 ] 未分類 | TB(0) | CM(2)

ふふっ 山猫軒さんが、以前飼っていらして
性格の良いアース君が、お話に登場してきましたね。
[ 2011/11/29 13:11 ] [ 編集 ]

Re: タイトルなし

トパーズさん。
よくぞ覚えていてくださいました。
へへへ・・・


[ 2011/12/01 10:56 ] [ 編集 ]

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