ネコと暦 その三 穴に落ちる

0701012.jpg



土曜日は仕事であった。二件とも虎ノ門である。一つはアメリカ大使館の前のビル。
もう一つは虎ノ門のJT本社ビルだった。
アメリカ大使館の前は午前中にあとにして一旦家に帰った。
昼食は家で摂り、また地下鉄銀座線で虎ノ門に向かった。
その地下鉄の駅で若い二人連れを見た。知り合いではない。
驚いたのは若い女の子(20歳は越えていると思う)がホームを歩きながら、
おにぎり(コンビニの)を食べているのだ。
最近よく電車の中では見かける(化粧も)がホームを歩きながらメシを食うというのには
少なからず驚いた。
これがプータローのようなオトコだったら分かるが若い女(そこそこの器量である)
となるとカルチャーショックを覚えてもおかしくない。


人間は口から食物を摂取してそして肛門から排泄する。
排泄するときは個室に籠もって人様にその様子を晒すことはないのである。
不肖山猫軒の一方的な偏見かも知れないが、物を食べる様子というのは、
けっして美的ではないと思う。
と言ったら、「彼女と食事するときはどうなのよ」と知人に言われたが、
彼女(恋人)は許せる。オナラノ匂いさえも香しいと感じる時もあったほどである。
(少し嘘くさいですが)
であるから、テレビの美味いものを食べる番組などは気持ちが悪くて見ない。
女優やら美しいタレントが大口開けてもぐもぐやる様はどうにもいただけない。

だから、いくら昼時でメシを食う時間がなかったとしても、
駅のホームを歩きながらメシを食うなんてことは止めて欲しいと、
心底思うのである。

そんなものを見たせいか、帰りの電車の中で久しくなかった心臓の発作が起きて、
2時間(今回は短かった)苦しんだ。
見てはならぬものを見てしまったからだろうか。




   ネコと暦 その三 穴に落ちる

        

既に黄昏の光りは失われ窓の外はうっそうと暗くなっていた。それと同時に不吉な匂いが穴の底(底があればだが)から立ち上って家の中に次第に侵入してこの家の存在を曖昧なものに変えていくようなのであった。
何時までも穴を睨んでいても何も物事は進展しないのである。今日のところはこれまでにして暦の束を穴の上に元通りにしようとしてまた押し入れに潜り込んだ。気のせいか穴は少し大きくなっている。穴をふさぐべく、慎重に暦に手を伸ばす。
その瞬間首筋から肩に衝撃が走った。思わず前のめりになって穴の淵に手を掛けて思いっきり力を入れて振り向いた。
ハナビィだった。ネコが飛びついたのであった。あっと声を上げたときは穴の中にもんどり打って落ちたのである。穴は力を入れた手のせいかまるで空気のように広がったのだ。
暗闇の中に落ちてゆくのだが、落ちるという感覚ではないのだ。浮遊するというか泳ぐというか、或いは浮かび上がるというか、流れるというか実に不確かな状態なのであった。音もなく光りもなく肉体そのものの感覚が失われて、言うなれば、「もしかしたら、オレは死ぬのであろうか」といったそんな感覚なのであった。長いようでもあり、一瞬のことのようでもあった。


町には人影は見あたらなかった。ひび割れた道路から雑草が勢いを増してそこここに生い茂っている。商店街の窓硝子が割れて商品が散乱していた。
そこは大震災の被災地のようであった。しかも、人影が全くないと言うことは
そう、あの原発事故のあった所なのかも知れない。住民は皆避難してしまい無人の町になったところへ来てしまったのだ。
防護服とマスクもしないでこうして立っていることなどは大変危険なことのように思えたが、
ネコは足元でこともなげに座っていた。ネコの防護服はあるのだろうか。
マスクはどうなっているのだろうなどと考えてみるのである。
人気のない町は不吉な匂いが立ちこめている。家から一歩も出たことのないはずのハナビィは家にいるときと同じ風でじっと商店街の方を見ている。
あたかも、始終来ている縄張りだとでもいった風なのである。
空は晴れわたり、風が心地よく海の匂いを運んでくる。
映画のセットのように非日常的な無人の光景の中でただ呆然と立ちすくみ、ふと頭上を振り仰ぐと、黒い穴の口が開いて浮かんでいるのである。
そして、それは相当な大きさで時々僅かに開いたり縮んだりするのであった。

座ってじっとしていたハナビィがやおら大きく伸びをして、後ろ足を舐めてから、歩き始めた。
「おい、おい、どこへ行くんだよ」と声を掛けたがちらっと振り向いただけで、
委細かまわず商店街を歩いて行くのだ。頭上の穴も付いてくるようであった。
ハナビィは商店街を抜けて公園のような所へと向かうのである。レンゲの花が咲いていた。春なのである。大震災は3月11日だったから、それから二三ヶ月後ということなのであろう。ネコに導かれるままに歩いた。しばらく行くと池のようなところにでた。生い茂る水草の上に蛙がいるのが見えた。
ハナビィはその雨蛙のところに向かっているのであった。
蛙の頭にはカタツムリが座っていた。夜、我が家に現われた蛙なのであった。

蛙は大きな目をぎょろりと白く反転させ、また黒目に戻してエヘンと咳払いをしたあと、おもむろに、
「ようこそおいで下さいました。先日は突然のことでビックリしたことでしょう。ご無礼をお許し下さい。」と言うのである。
「いいぇ、それはいいけれど、これはいったいどうしたことなのですかね。」
と答える。
そもそも、蛙と話をするなんてことは普通ではないことなのに、
頭上の穴を通ってきたときからもう十分に異常なのであるから、蛙と挨拶を交すことも有りなのだと自分に言い聞かせているのであった。
第一ここには人間がいないのである。何キロか先には原発があって、そこには事故処理に懸命の努力をしている大勢の人間がいるのだろうが、ここには人間はいないのだ。













スポンサーサイト
[ 2011/11/14 00:57 ] 未分類 | TB(0) | CM(5)

大丈夫ですか?

お天気のせいでしょうか?
マオちゃんとまったりしてくださいね。

歩きながら食べる、これは許せません!
[ 2011/11/14 09:02 ] [ 編集 ]

Re: 大丈夫ですか?

おしゃれな猫さん。
おはよう。
おしゃれサロン楽しかったようですね。
もうナビなしでも関西旅行はOKでしょう?

体調はもうOKです。
最近はきちんと薬を飲んでいますから。
猫や、イヌだって歩きながらは食べないです。
世の終りは近いのでしょうか。街角のイエスキリストが説いています。

> お天気のせいでしょうか?
> マオちゃんとまったりしてくださいね。
>
> 歩きながら食べる、これは許せません!
[ 2011/11/14 10:48 ] [ 編集 ]

世も末ですね~

山猫軒さま
初めてお邪魔します!
ユニークなブログで、面白く拝見しました。
女の子のおにぎりの立ち食いは頂けませんね。
ヨーロッパでフランスパンを齧りながら歩くスタイルを
真似ている積りでしょうか?
大和民族の恥です。
[ 2011/11/14 14:31 ] [ 編集 ]

読者は 我侭です。
読み終えたら、すぐ続きが読みたくなります。
お急ぎくださいませ♪

[ 2011/11/14 15:30 ] [ 編集 ]

今の若い人って、混雑する電車の中でも、優待席に座ってでも化粧をする人を朝の電車で見ます。

どんなにかわいい人でも不思議な生き物に思えてなりません。(私だけ)
[ 2011/11/14 21:34 ] [ 編集 ]

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://isoisomao.blog3.fc2.com/tb.php/539-cb18cba7