牡蠣と檸檬

        牡蠣と檸檬




      うたた寝のドアの前に
      白い箱が届いていた
      差出人はついこの前
      はじめて酒を酌み交わした
      一面識の知人からだ
      白い棺のような発砲スチロールの箱に
      殻付の牡蠣が整然と収まり
      黄色い檸檬と
      白い軍手が寄り添ってある

      さあ、喰ってくれ
      わずかな隙間に
      しんぼう強く呪文を唱えながら
      鉛色のナイフを差し込み
      過ぎていった日々と
      切れ切れの今日を繋いでいる貝柱を
      切断する
      すっぱりと 蛎殻をひらけば
      堂々と膨らんだ悲しみの
      匂いが
      にぶく光る蛎殻のうちに
      広がってゆく

      テーブルの塵をはらい
      ぼくは 海に向かって座る
      今日は海がよく見えるのだ
      全てをさらけ出した裸の女のように
      白々と殻のうちに横たわった牡蠣を
      口に受けて
      かつて あった左奥の歯で
      噛みしめ呑み込む
      添えられた檸檬とともに
      丸善の書籍の城に置かれた
      檸檬とともに




「梶井基次郎」 <檸檬>


学生時代授業をさぼってひたすら本を読みあさった時代、
梶井基次郎の<檸檬>は鮮烈な記憶として今もなお、
僕の中にある。
多分、その時代の読書は日本文学、フランス、英国、アメリカと、
それはもうすさまじい数であった。
何といっても、大学生活の大半が部屋に籠もるか、古本屋通いであったから・・・

そのようなわけで、今日は檸檬を添えてみたのである。
それにしても、本を読まなくなりましたね
古いユリイカ、現代詩手帳、詩と思想などの雑誌を引っ張り出し
て読むくらいなのである。

広島のきよしさん、ごちそうさまでした。
また、送ってください・・・と言ったら怒られるかな
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[ 2011/02/04 17:11 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

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