上弦の月

       上弦の月
         <門谷純の歌に寄せる>




    誕生日だったので
    月を買いに出かけた
    佐久間町の公園の銀杏の木の下で
    年寄りの物売りが
    小さなざるを抱えて
    猫座りがまたおかしい

        今日のできは良くない
        丸いのはありませんよ
        みんな半分の出来損ないの
        月ばかりですから


    と 言うのである
    しかたがないので
    出来損ないの月を一個買って
    ぼ~っと ねじれた道を歩いて
    上野のABABでクレープをたべた
    としよりの誕生日には
    クレープが美味いのだ
    それでも 何か忘れ物をしたような
    気分が立ちこめていて
    上野駅の入り口に入ろうとしたら
    近寄ってくる声が
    耳たぶを引っ張って
    生クリームのように甘く侵入してくる

    ギターを弾きながら
    長い髪で顔を隠した女がひとり
    歌を唄っている
    旋律と不思議な声は
    秋の夜の空を振動させて
    ぼくのポケットの中から
    するりと抜け出した
    出来損ないの月が
    ビルの上の空に浮かぶのである

    透きとおった歌声が
    上弦の月をみごとに輝かしく
    中天に飾り
    そして
    ぼくはその歌をポケットに詰めて
    口笛を吹きながら
    帰るのだった








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[ 2010/11/14 22:59 ] 未分類 | TB(0) | CM(1)

誕生日おめでとうございます。
素敵な天からのプレゼントでしたね。
[ 2010/11/15 10:25 ] [ 編集 ]

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