左利きの指先

        左利きの指先



    そっと 忘れてゆくのであろう
    ほんのひととき
    向かいあって
    もう、ずいぶん以前から
    そうであったように
    箸を運ぶ左利きの指先を

    うれしさと とまどいと
    出会ったがゆえの寂しさが
    わたしたちの背後を
    川のように流れて行く

    過去を共有しないふたりが
    一瞬の現在(いま)を
    とおい遥かなあこがれを見るような
    まなざしをして
    ひとりぽっちではない と、
    言葉にならない ことばを
    ちいさな白い杯のなかに
    浮べていた

    しだいに衰えて去りゆく
    夏の暑い夢が
    謎めいた微笑みに
    かすかにおのおのいている
    左利きの細い指が
    音を消したテーブルの上で
    可愛い魚のように
    泳いでいる

    そっと 忘れてゆくのであろう
    ほんのりと現われ
    通りすぎる季節の
    変わり目を

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[ 2010/09/11 23:31 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

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