下町ロケット

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最新の直木賞受賞作を読むのは久しぶりである。
「下町ロケット」池井戸潤


昨日、遠方に住む恋人と愛犬アースに会うために、
東京駅から高速バスに乗った。
一時間半のバスの旅である。
居眠りをしているのも芸がないからと、
書店で手にしたのが「下町ロケット」である。
タイトルがいい。山猫軒も下町の片隅にひっそり、
つつましい生活を送っている。
「下町」が憎らしいほど山猫軒にすり寄ってくる。
それで、
下町の職人がロケット花火を打ち上げた話かしらんと思いつつ、
購入した。
立派なハードカバーである。
基本的には山猫軒は書物はハードカバーを買わないことにしている。
後始末に困るからだ。
余命幾ばくもない身としては出来うる限り、
身の回りのものを少なくしておきたいのである。
本は文庫本、それも読み終えたらすぐさま、人に提供することにしている。
したがって、この「下町ロケット」も読みたい方がおられたら、
どうぞ遠慮無く申し出たらよろしい。
進呈いたします。


札付きの天の邪鬼、へそ曲がりの山猫軒は、
「・・賞」受賞といわれる小説の類は読まないことにしている。
流行ものが嫌いなのである。
流行遅れ、世の中に忘れ去れたものや、歌、人、
そんな寂しい感じのものが我が身には似合うと思っている。


小説で、唯一例外はまだ、ヘソが曲がっていなかった少年時代に、
芥川賞受賞の「死者の奢り」大江健三郎と、
直木賞受賞「テロリストのパラソル」藤原伊織の2作のみである。
「テロリストのパラソル」の時は既にヘソは捻れ、
十分すぎるほどに頑固になっていたが、
タイトルに惹かれた。
「テロリスト」に憧れていながら、市井のつまらない人生を送る身を、
酒でまぎらわすという埒もない男にとっては、
「テロリストのパラソル」は眩しいほどのタイトルなのであった。


さて、「下町ロケット」 バスの往復3時間と、家に帰ってきて、
ベットに横になって3時間、合計6時間で読み終えた。
正直な感想としては、面白かった。
ストーリーはあえてここでは述べないが、
ロケットは花火でも、オモチャでもない。
宇宙に飛び出す本物のロケットのことなのである。
山猫軒の記憶によれば、日本が戦争に敗れてまもない時期に、
糸川英夫博士が作ったロケットが
<ペンシルロケット>だったように思う。
数分前のことを覚えられないのに、このように大昔のことは、
何故かしっかりと覚えているのは不思議なことだ。
今さっきのことは数十年先には、
細部にわたって思い出すのかもしれない。
そう考えると、
「よしっ!あと30年は生きよう!」と、力がみなぎってくる。


どうも、話がズンズン逸れてしまいがちだが、
「下町ロケット」、東京の下町工場(といっても中小企業だが、)が、
ロケットエンジン、心臓部の部品を作りだす苦心談である。
「技術立国日本」といわれていた我が国が次第に、
その卓越した物作りと、人から人への技術の継承に、
翳りが見え始め、それに追い打ちをかけるように、
安価なものを求める風潮と、
アメリカ発「金融至上主義」が重たくのしかかって、
この国の行く末に暗い影を落としている。
我が国の未来は暗いのである。


そこに、東日本大震災である。
フクシマ原発事故である。
吹けば飛ぶような中小企業が大企業を相手に、
プライドと品質を掲げて、真っ向勝負を挑む痛快さが、
この小説を一気に読み終えることになった理由だと思う。


「テロリストのパラソル」は挫折した世代の
やりきれない心が描かれていた。
藤原伊織の作品は湿度が高い。
「下町ロケット」にはその湿度が低いのである。
乾燥しているのだ。
それが、いいのだろうとも思う。


山猫軒としてはジメッとしたのがスキであるが。



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[ 2011/08/31 11:36 ] 未分類 | TB(0) | CM(4)